歯周病
歯周炎患者の欠損補綴にインプラント治療を用いて包括的診療を行った一症例
初診時口腔内写真
口腔機能回復治療には様々な方法があるが今回,インプラント治療を用いた理由は局部床義歯の支台歯に加わる負担過重や違和感,ロングスパンブリッジを装着した際に起こりうる再治療の煩雑さを避けるためである。
患者は36歳,男性。右上奥歯の違和感を主訴として来院。既往歴,家族歴に特記事項無し。喫煙歴16年,20本/日
検査所見
4㎜以上のプロービングポケットデプスが75%,BOP14%,PCR 32%。多数歯にわたりう蝕,根尖病変が認められた。
診断
広汎型中等度および限局型重度慢性歯周炎
治療計画
1)歯周基本治療
口腔清掃指導,禁煙指導,スケーリング・ルートプレーニング,予後不良歯の抜歯(12,13,16,22,28,37,38,48)不良補綴物の除去(25,34~36,45~47),歯周治療用装置の作製および装着(17~27,34~36,44~47),う蝕処置(11,14,15,17,21,24,26,27,33,43,44),感染根管治療(25,34~36,45~47)
2)再評価
3)歯周外科治療
再評価後,4mm以上のポケットが残存している場合,ウィドマン改良フラップ手術を行う。
4)再評価
5)インプラント手術
6)口腔機能回復治療,オクルーザルスプリント装着
7)再評価
8)メインテナンスもしくはSPT
治療経過
歯周基本治療(28,38,48は清掃性向上のため,16,37は重度のう蝕のため,12,13,22は歯根破折のため抜歯),再評価後,4㎜以上のプロービングポケットデプスが残存した部位(14,15,17,25~27,33~36,42,44~47)に対してウィドマン改良フラップ手術を行い,再評価後プロービングポケットデプスが全て3㎜以下に改善したことを確認後,インプラント手術,口腔機能回復治療を行い再評価後,メインテナンスへと移行した。また夜間就寝時のパラファンクションへの対処としてオクルーザルスプリントを作製し,使用法を指導した。
治療終了後口腔内写真
インプラント治療を用いたことにより残存歯の補綴装置製作の精度が向上したことに加え今後,再治療の必要が生じた場合の対処も容易である。また禁煙指導により歯周組織の著しい改善も認められた。今後はインプラント周囲炎,咬合の安定,歯周炎の再発に注意しながら定期的な管理を継続する予定である。